ディモルホセカ
毎日歩く道すがら、
はじめてであった花があった。
お日様に向かって花びらをいっぱいに広げる小さな花たち。
「なんという花だろう」
表示にあったのは「ディモルホセカ」。
カタカナに弱い私は、
一回では覚えられない。
次の日、また同じ道を歩き、その花にあった。
「なんてなまえだったっけ?」
また表示を見る。「ディモルホセカ」
口の中で、呪文のように唱えてみる。
3日目、4日目と日が経つにつれて、
「ディ・・・」
「ディモル・・・」
少しずつ、花の名前は私の中に浸透していった。
そしてその道を通らなくなってからも、
私はあの花と花の名前を憶えていられるようになった。
ディモルホセカ。
毎年、この季節になると思い出す。
なぜあの花の名前を憶えたかったのか。
わからない。
わからないけど、
運命的な出会いだった。
もう30年以上前の事なのに。
あの日の道、あの日の日のまぶしさ、明るさを思い出す。
あの瞬間と名前を覚えた日々がなければ、
今の私はないのだから。
愛おしい花、愛おしい日々。
そんな出会いたちで、今の私は創られている。